(“あの人”だ…!)
五ヶ月ぶりに見る“あの人”は、皆と同じ浴衣姿だった。
しかし、髪はいつものポニーテールだった。
そのどちらも、彼女にはよく似合っていた。
久し振りに目にする“あの人”の姿に、健太は全身がカアッと熱くなり、胸は息苦しいまでに高鳴り、膝頭が細かく震えた。
(マジで、また逢えた…)
しかし健太は、すぐに激しい落胆を味あわねばならなかった。
“あの人”は、二人の友人と一緒だった。
そして、三人の同年代の男たちとも一緒だった。
しかもその男グループは、岡島要太とその友人達―つまり、健太と同じ学校の同級生達だった。
(マジ…?)
健太はその場に崩れそうになった。
いつだったか、岡島が「Sガクのオンナとヤッた」とか言って自慢していたのを思い出す。
(ウソだろ…)
しかし健太は次の瞬間悟った。
「終わった…」
“あの人“達の姿は混雑に紛れて、アッという間に見えなくなった。

健太は転がるようにして新宮行き電車に乗り込むと、全身を委ねるようにしてシートに腰をおろし、天井を仰ぎながら目を瞑った。
体が更に重くなったような気がする。
たった今改札口で目撃した光景が、健太の意思を無視して瞼に映しだされる。