「やめろ、ジジイ!」
あまりの怒りに健太の声は震えていた。
「なんだ、このガキァ」
男は健太の肩を小突こうとしたが、相手がヒラリとよけたためにただでさえ足元の怪しいこの酔っ払いはそのままよろけて転倒し、反対側のドアに頭をぶつけた。
その様子を見届けた健太は、背中に庇った“あの人”を振り返る。
ポニーテールが少し乱れて肩にかかり、唇は微かに震えている。
大丈夫?
健太がそう声を掛けようとしたとき、
「ああ、おめぇらはデキてたのか…」
と、意味あり気にニヤリとして立ち上がると、二人の高校生を舐め回すような目つきでジロジロ見た。
「おめぇらデキてんだろ?で、もうチューはしたのか?え、やっぱ舌入れんだろ?エッチは何回シたんだ?どうせゴムしねぇでヤリまくってんだろ?ったく今時の高校生のガキはヤリマンばっかで…」
耳を塞ぎたくなるようなことをまくし立てる酔っ払いに、健太の両手はいつしか固く握り締められていた。目の前にいる男が、かの岡島要太とタブって見えてくる…。
「ネェちゃんだってそんなカワイイ面(ツラ)して、しっかりそいつのアソコしゃぶってんだろ?」
ブチッ!
健太は耳の奥で、確かにその音を聞いた。