「…想は喧嘩なんかしてない」
沈黙を破ったのは、秦利だった。
自分が見た想を総二郎に秦利
は伝えた。手を出さず、黙って
殴られ、罵られていた想を。
「…アイツら……」今にも
飛び出しそうな総二郎を源丞と
凌慈は止めた。
「想は…兄さんにそういう
ことして欲しくないから、
嘘ついたんやないんか?」凌慈
はそう言い、総二郎をなだめた。
大人だ、想は。
自分のことより、まず兄や他人
を思いやる。
そして何でも背負い込む。
あの小さな背中に、沢山のもの
を背負っているのだろう。
想が向かった先は総二郎の
親友、拳の元。医師である拳は
想も慕っている。
玄関の前で拳は煙草を吸い、
想に気づくと、目を細めた。
「何かしたんか、想」煙草を
踏み消すと、白衣を叩き、埃を
落としたようだ。
「どうせ、総二郎だろ」拳は
笑い、今にも泣きそうな想の頭
をぐしゃぐしゃにした。
疲れていたのだろう。ソファー
に座っていた想はすぐに眠りに
ついてしまい、総二郎はタオル
をかけた。
想の寝顔を見る度に拳は胸が
痛くなる。
幼い想は何度か、寝言で母親を
求め、泣いていた。
常に笑い、拳達の前じゃ、涙を
見せない想が辛かった。
沈黙を破ったのは、秦利だった。
自分が見た想を総二郎に秦利
は伝えた。手を出さず、黙って
殴られ、罵られていた想を。
「…アイツら……」今にも
飛び出しそうな総二郎を源丞と
凌慈は止めた。
「想は…兄さんにそういう
ことして欲しくないから、
嘘ついたんやないんか?」凌慈
はそう言い、総二郎をなだめた。
大人だ、想は。
自分のことより、まず兄や他人
を思いやる。
そして何でも背負い込む。
あの小さな背中に、沢山のもの
を背負っているのだろう。
想が向かった先は総二郎の
親友、拳の元。医師である拳は
想も慕っている。
玄関の前で拳は煙草を吸い、
想に気づくと、目を細めた。
「何かしたんか、想」煙草を
踏み消すと、白衣を叩き、埃を
落としたようだ。
「どうせ、総二郎だろ」拳は
笑い、今にも泣きそうな想の頭
をぐしゃぐしゃにした。
疲れていたのだろう。ソファー
に座っていた想はすぐに眠りに
ついてしまい、総二郎はタオル
をかけた。
想の寝顔を見る度に拳は胸が
痛くなる。
幼い想は何度か、寝言で母親を
求め、泣いていた。
常に笑い、拳達の前じゃ、涙を
見せない想が辛かった。


