ようやく買い物を終え、帰る
途中の出来事だった。

目の前に男達が立ち塞がった。
ガラの悪い、見るからに危険な
香り漂う男達。

「総二郎の可愛い娘やないか。
今までの借り、返しとこうか?」
リーダー格の男は笑った。

想は何も言わず、首根っこを
捕まれ、先程の秦利のように壁
に体を押しつけられた。

男達は秦利には目もくれず、
確実に想だけを狙っている。

「アンタら、弱いんやな…」想
の逆撫でする一言を合図に、
鈍い音が響いた。

秦利は止めに入ろうとしたが
体を押さえこまれてしまった。
想は一度も手を出さず、男達を
睨みつけ、鼻で笑った。

「お嬢ちゃん、口ほどにも
無かったな」男は言い、笑った。
想は突き飛ばされ、壁に背中を
打ち付けたようで、苦い顔を
していた。

男達が去り、秦利は何も出来ず
想は笑っていた。

「総兄の仕事、ヤクザやから。
恨み買いまくりみたいやな…」
笑えない冗談を言い、想は痛み
に顔を歪めた。

笑顔を絶やすことない想が、
余計に痛々しかった。