気まずさと戸惑いが混じり合った教室の空気。
ちらほらと話し声は聞こえるが、あまりにも微かで和紗の耳には届かない。
無事に入学式を終えた一年生は只今、教室で待機中であった。
和紗はひとり溜め息をついた。
一時間半にもわたる式で身体が痛い。
座っていただけなのに何故だと自分に問うてしまうほどに。
和紗は跳ねる鼓動を抑えるように胸に手をあて、ゆっくりと立ち上がった。
目的を果たすために。
自分の席から斜め前にすこし離れた場所に座っている女の子を視界に入れる。
そう、遅刻騒動のときにお腹を抱えて笑っていた子に話しかけるために。
その子はぐでっと机に突っ伏していて、和紗はどうきっかけを作ろうか悩んだ。
声をかけるだけでは気付いて貰えない可能性があったので、肩をタッチしてみる事にした。
「あのー…、わっ」
曖昧な声を発しながら肩に触れるとその子がいきなり振り向き、和紗の手を取った。
初対面で驚くのは失礼と分かっていながらも、止められない。

