和紗の痛みを軽減させていたのは、紛れもなく安斎悠壬だった。

自分の背中で和紗を庇っている。


何なの、もう。


新たな疑問が頭をよぎる。

無愛想な自己紹介をしてみたと思えば、絡まれていた和紗を助けてくれたり、今も衝撃から守ってくれている。


一体どの安斎悠壬を信じればいいのだろうか。


和紗は一人で悶々としながらも、自分が降りる駅まで何も話さなかった。


結局、お礼どころか挨拶さえもせずに、和紗は電車を降りた。