今日、教室で見た無愛想な顔で安斎悠壬は和紗を見下ろしている。
「何で助けてくれたの」
まずはお礼だろうと分かってはいるが、和紗は安斎悠壬を敵として見なしているため、絶対に言わない。
これが他の人物だったら素直にお礼するが。
だがそんな事まったく気にならないと言わんばかりに安斎悠壬は飄々と言葉を紡ぐ。
「何となく」
「そう。じゃあね」
済ました態度に苛々するが、外には出さずに早々に別れを告げた。
あんな奴の近くには居たくない。
一刻も早く遠くに行きたい。
これほどまでも我が家を懇願したのは初めてだった。

