突然の助けに呆気にとられている和紗だったが、驚いているのは男も同じで目を瞬いている。
「アンタの汚い手でこいつに触れるなって言ってるんだけど」
口調はあくまでも柔らかいのに、声音の雰囲気だけが硬く冷えている。
それに気圧されたのか、男達はあまりにもあっさりとその場を去っていった。
もちろん「この馬鹿どもが」という捨て台詞を残して。
良かった…。
和紗は何もなかったことに安堵するも、抱き込まれていることを思い出し、思い切り振り返った。
同時に離れていく腕。
消えていく温度に何故か寂しさを覚えながらも、腕の正体を見ようと視線を上げる。
途端に和紗は言葉を無くした。
目の前にいたのは、安斎悠壬だったのだ。

