「私、暇じゃないので。すみませんが遊べません」
ここで怖がる素振りを見せてはいけないと、あえて強気に喋る。
だがその行動こそが男をエスカレートさせているとは知る由もない。
「突っ張っちゃって。君かわいいね」
そう言いながら男は和紗の肩を抱いた。
一瞬にして鳥肌が立つ。
もう我慢できなかった。
拳を握り、男のどの部分にパンチをお見舞いしてやるか思案する。
やっぱり鳩尾が一番だろうという結果になり、より強く拳を握る。
その間も男はしつこく声をかけてくるが、その全てを無視して大きく息を吸う。
よし!
と意気込んだとき
「悪いけど、腕離してもらえる?」
と冷たく言い放つ声と、和紗を抱き込む温かい腕が現れた。

