高鳴る胸を抑えて、啓也を見る。
何か言って欲しいという期待を込めて視線を送るも、啓也はただこちらを見つめて微笑んでいるだけ。
その微笑みに意味はあるの?
もしかしたら、と勘違いしてしまう。
啓也に至近距離で見つめられるのに耐えかねた和紗は照れながら視線を外した。
代わりに自分の足元を見る。
だが瞬間、膝に置いていた手を掴まれ半ば強引に立たされた。
「えっ、ちょ」
立たされた勢いでそのまま引き寄せられ、和紗は気付いたら啓也の胸にいた。
突然の事で状況判断が出来ていない和紗はただ声をあげ、手足をジタバタさせる。
けれど、暴れるほどに啓也は強く抱き込もうとして、和紗は余計に訳が分からなくなる。

