戸惑いプリンセス



その時、床が暗くなった。
前を見ると啓也が和紗の側に立っていて、啓也の影が床を薄暗く染めていた。


いつの間にか隣に来ていた啓也に呆気にとられ、呆然と見つめていると不意に頭に感じる温かさ。

啓也が和紗の頭を撫でているのだと気付いたのは直後で、優しい瞳で見つめられれば、視線を逸らすことは出来ない。


「啓也…?」


無意識に呟いた言葉に啓也は柔らかな笑みを零す。


「どうしたの?急に」


先程よりかは幾らかはっきり発音できた。

跳ねる鼓動は一向に収まる兆しがない。