「何で、何で、何で?
あいつムカつくよ、何様なんだよ!
顔が良ければ何やっても許されると思ってるんじゃないわよっ」

「和紗。少し落ち着こう」

「落ち着いてるって。
ねぇ秋!秋も安斎悠壬のこと格好良いとか思ってんの?」


宥める秋穂の言葉もしっかり聞かず、一気に不満をまくしたてる。


和紗自身が自己紹介をしている時も苛々しっぱなしで、この憤りを早く吐き出したいと思っていた。


そして、放課後になってようやく怒りを発散することが出来たのだ。


「いや、うちは興味ないし」


安斎悠壬を格好良いと思うかという質問に律儀にも答えてくれる秋に、和紗は今更ながらに申し訳なく思えてきた。


言ってしまえば、この怒りは和紗が勝手に苛ついて勝手に発散しているだけなのだ。

それを秋穂に聞かせてしまった。


「なんか、ごめんね」

「何が?」


ぽつりと零すとすかさず返ってくる返答。

まめだなと思いながらも素直に秋穂の気遣いが嬉しい。