戸惑いプリンセス



カツカツとチョークが黒板に当たる音が響く。
それが心地いい。


突然音が止んだと思ったら、黒板には綺麗な字で"榛原啓也"と書かれてあった。


改めて言われなくても知ってるよ。


和紗は黒板の文字を見て毒づいた。


「見ての通り、俺は榛原啓也だ。
このクラスの担任で、教科担当は理科。多分お前たちの理科は俺が見ることになると思う。
もし寝てたら、その時は…そうだな。
みんなの前で一発芸でもしてもらおうか」


再び口元を歪めて言い放つ。

すると教室が湧いた。

あちらこちらから「嫌だ」とか「ふざけんなっ」とかいう言葉が聞こえてくる。


だが、お構いなしといった様子で榛原は話を進めていく。

結局クラスのブーイングは見事に無視され、予告通り出席番号の早い人から自己紹介をしていくことになったのだった。