飛翔の月


赤魏はというと、この実の兄に受けた辱めにどうしようもない怒りとも取れる感情が沸き上がっていた。

しかし、ここで拒めば未だ捕われの身である伊気がどうなるかわからない。

赤魏は意を決して、赤至の前に胡座をかき、軽く握った手を左右床ににつけて、頭を下げた。

「──俺…、私、赤魏は、只今をもって貴方様に従うと、……誓いまする………。」

聞き取れるギリギリの、ごく小さな声で搾り出されたその言葉に、部屋中がしん、となった。