盗賊達は赤魏と伊気がつけているのに気付いていないようだ。

瞬間移動も使えないと思われる。

しかし、行く先が気になる。

この方向は…。

まずいかも知れねェな。

向かう先は、南。

この先、人が住んでいるのはここからかなり離れた最南端の紅蓮城城下街のみだ。

「そういや、アンタの名を聞いてなかったな。
俺の名は、伊気だ。」

伊気が小声で話し掛けてきた。

赤魏は焦った。

赤魏という名は、朱雀領のみならず国全体に知れ渡っているため、本名は名乗れない。

赤魏はしばらく考え、

「至炎(シエン)だ。」

と偽名を教えた。

「至炎、か。
良い名だな。」

「…ども。」