ぼくは一瞬わけがわからなくなった。
きょとんとしたぼくにやれやれというポーズをしてアサミさんは続ける。

「ヤマダくんはきっと金曜日にあった女の子がすきになっちゃったんでしょ?それをなんで彼女にちゃんとその時に言わないのよ?」

ぼくはアサミさんの言うことをまるで勘違いしていたようだ。

「そういうのは彼女に対しても失礼だよ。言わずにそのままにしておくなんてさ、ダメな男の典型だよ。自分が傷付きたくないからって態度を保留して、その分彼女を傷付けている事に気がついていないの?」

一方的に責め立てられながらもぼくはアサミさんの言葉が正しいことを理解していた。
ぼくはどこかで本心を伝えることで彼女を傷つける事、そして傷つける事で自分自身も傷付くという事を恐れていただけだった。

「そうですよね。確かに自分がそれを見たくないから問題を先延ばしにしてただけだ。彼女もなんとなく感じているところがあるだろうって思ってた。うやむやのまま終わればって、楽な方向に流れていたのは確かです」

アサミさんはそれを聞くとうんうんと頷いた。
それまでの怒りが嘘のようににこやかに微笑んだ。