沈黙を破ったのは千夏だった。

「しばらくは会わないようにしない?」

それはとても乾いた声だった。

「なんで?」

理由はわかっていても聞かないわけにはいかない。

「だって、会う意味がないじゃない?こんなのさ」

感情を押し殺すように千夏は静かに言う。
押し殺された感情は、ぼくの罪悪感を増幅させる。


「わかった」

ぼくは一言絞り出すと車内はまた沈黙に包まれた。

彼女を自宅まで送った後、ぼくは一人でコンビニの駐車場に車を停め、コンビニでタバコとライターを買い、ゴミ箱の隣においてある灰皿の前でタバコに火をつけた。

タバコなんて吸ったことはなかった。でも、なんとなく気持ちが押しつぶされそうな感覚を和らげてくれるのではないか、そう思った。

多分、アサミさんのせいだ。彼女は会社の喫煙スペースで実にうまそうにタバコを吸う。

結果は全くの期待外れ。単に有害な煙りにむせるのみで期待した効果はまるでなかった。

煙が目に入り、ぼくは少しだけ涙を流した。