「もしも~し?」

 何処からか声が聞こえる。その声は、夢から剛の意識を現実に無理矢理引き戻していく・・・

「う、う~ん?」

 剛が起きると、そこは元の森であった。

(やっぱり夢だったんだ・・・結局、誰だったんだろ?あれ、そう言えばさっき誰かが声を掛けてきていたような・・・)

 剛は、軽く周りを見回す。しかし、人の姿は見えない。

「俺の気のせいか?」

 その時である。剛の後ろから幼い声がした。

「やっと起きた~♪」

 振り向くと、そこには見た目十歳ほどの、髪を後ろで結った可愛らしい女の子がいた。
 その顔からは笑みがこぼれ、純心無垢という言葉が良く合う。
 どうやら、先程の声はこの子だったらしい。

「君が起こしてくれたの?」
「はい!そうなのです~♪・・・なんでお兄はここで寝てたの?」
「あっ!」

(そうだった。俺、時間になるまで寝てたんだっけ!)

 慌てて自分の時計を見ると、針は二時三十分を示していた。
 集合時間丁度である。

(ヤバ!急がなきゃ!)

 慌てて剛は森から出ようとしたその時である。

 ギュッ

「えっ?」

 見ると、女の子が剛の服を力いっぱい握り締めていた。
 そして、上目使いで一言。

「置いてかないで・・・」

(え、ええ~!)