「……ふぅ。ここまで来れば奴も
追い掛けて来ないだろ…」

美鶴は半拉致状態。始めこそ肩を
抱いていただけの筈が、振り切る
為にと担ぎ上げられていた。

「あの、先輩。」

「何だぃ?」

「降ろして下さい。」

美鶴さん少々ご立腹。
無理も無い。好きな男と居たのを
強引に引き剥がされたのだから。

「おぅ、悪ィ。」

横塚は美鶴をストンとベンチの上に
乗せた。二人は公園に居るのだ。

「何か用ですか?」

いつもより低い声で美鶴が言う。

「雪野英恵と同じクラスだよな?」

「………はい。」

「頼みがある。」

「仲介はしません。」

「否、違うから。」

「だったら何ですか?」

「あの女を絶対吹部に入れろ。」

「何でですか?」

「傍に置いておきたい。」

「高二にもなって一目惚れなんて
したんですか?」

「否、だから違うって。俺は美鶴
一筋だよ!祥悟ショック!だよ!?」

「知り合いなんですか?」

「ん〜、まぁそんなもんだわな。
つー訳でよろしく!!」

「あ、ちょっと……」

祥悟は公園から出て行った。