「雪野さん。」

和俊が英恵に声を掛けた。

「何でしょう?」

英恵は読みかけの本にしおりを
挟んで、和俊の眼を見つめた。

「あの…自己紹介の時フルートが得意
だ。って言ってましたよね…?」

「ええ。それが何か?」

堂々とした透き通った声。
和俊ばかりが緊張している。

「…あの…良かったら吹奏楽部に
入ってくれませんか…?」

「貴方達吹奏楽部なの?」

「はっはいっ!ぼ、僕がバリトンサック
スでこっちがバストロンボーンです!」

「ちょっとカンちゃん、こっちって
何!?こっちって!!」

怒った美鶴を見ても顔色一つ
変えずに、英恵は答えた。

「部活見学に行ってから自分で
考えて決めます。」

「ぁ…そ、そうですか……。」

あまりに堂々とした英恵の態度に
和俊はたじろいでいた。