4月某日――――。






僕と美鶴は、高校の入学式に行く
為に桜の綺麗な坂を上っていた。






「カンちゃん!カンちゃん!!」

「カンちゃんはやめてくれ…。」

「ねぇ、見て!あそこ!!」

「無視ですか?無視ですか!?」

僕の言葉に無視しながら、美鶴は
後ろの方をこっそり指差した。

「凄く綺麗ー……。」

「あーはいはい。綺麗な桜だね」

「違うよ!カンちゃんの馬鹿!!」

ろくに美鶴の指差した方向を
見なかった僕に、彼女は言った。

「あの女の子!髪長い!!」

「え…?」



美鶴の指差す方向を、ちらりと
振り返った。



「うわ……」



僕等の2メートル程後ろに、
この世の者とは思え無い、
美少女が歩いていた。


腰まである黒くて恐ろしい程に
艶やかな髪。

上を向いている眉毛と、
その対象に垂れ下がった眼が、
何とも言え無い綺麗なバランスを
保っている。

鼻筋はスッと通っていて、少し
彫りが深い。

真っ白な肌が太陽に美しく
照らされ、一人違う空気を
彼女は纏っていた。



「あんな目立つ娘中学には居なか
ったよね?編入生かな?」

「………」

「カンちゃん?おい、聞いてる?」

「………………」

「バカンちゃーーん!!」

「おわっ!」

「もう、人の話聞いてよ!」

「あ…ごめん、何?」

「あの女の子編入生かな?って
言ったのー!」

「あぁ、そうだろうね。」

少し機嫌を悪くした美鶴を
余所に、僕はまだ彼女に
釘付けになっていた。