涙にKISSして




「ごめんあそばせ」



ぶつかった相手はそれだけ言って、足早に去っていった。





転んだ体を起こして頭を上げる。



目の前には誰もいない。ただ…周りには地面に座っていたあたしを怪しそうに見つめる視線だけ。



恥ずかしさのあまり、慌てて鞄を拾う。




カシャンと何かが鞄から落ちる音がして、地面に視線を移す。


見覚えのない…鍵。



「さっきのぶつかった人のかな…鍵なくしたら困るよね…」



後で先生にでも渡そう。




そう思いながら、それを拾う。





そして入学式に遅れないように足を急がした。