「でも今日の渡里君見てて思った。本当に美麗ちゃんの事好きなんだって」



すると咲さんはあたしの手を握った。



「ねぇ?美麗ちゃん。お願い、渡里の気持ちに答えてなんて我が儘言わない。美麗ちゃんがどんな答えを出したとしても、今のまま変わらず渡里の傍に居てあげて?」



真剣な表情から。


握られている手のひらから。


痛いほどの咲さんの渡里君への想いが伝わってくる。



「うん……分かったよ」



あたしはそう言って頷くと、咲さんは満足そうに笑った。



「……ありがとう」



そう言って咲さんは涙を落とした。



「咲さん……ううん。咲ちゃん」



あたしは泣いている咲ちゃんの綺麗な髪を優しく撫でた。



ホントは咲ちゃんの気持ちは分かってる。


でも今、あたしの立場では何も言えないから。


気付いてないフリするね。


ごめんね?咲ちゃん。


でも今のあたしには、咲ちゃんを慰める言葉なんて言う権利ないから。


もうちょっと待っててね。


咲ちゃんが前に進めるように、あたしも頑張るから。