成月 Side
取り払う事のできなかった線。
その線はいつのまにか作られ始め、そしていつの間にか出来上がっていた。
気付いた時にはもう遅かった。
完璧に出来上がってしまった線は、壊す事は難しい。
作り上げられた時間の倍以上壊すのに時間がかかる。
どんなに頑張っても、尚の線は越えられなかった。
どんなに一緒に遊んで笑ったって。
どんなに連係して喧嘩に勝ったって。
どんなに一緒に同じ時間を過ごしたって。
尚はその線を取り払おうとはしなかった。
どこか必ず一線引いておれ達を一歩引いて見ていた。
友達なのに友達じゃない。
他人じゃないのに他人。
そんなぎこちない関係だった。
だから友達のように触れ合う事すら、少し躊躇っていた。
会社の社長と課長みたいな、そんな関係。

