おれは気づく事ができた。



おれの憎しみは、桐生から琴羽、そして自分へと代わっていった事に。



「“あんたがどうして琴羽さんに好きになってもらえなかったか分かる?あんたは尚と違って、尚を蹴落とす事しか考えてなくて、肝心な琴羽さんへの思いやりをしなかったからよ!”とも言われた」



あいつの言葉がおれのくすんだ心に光を与えてくれた。



今思えばそうだろ?



どうしてあの時おれは僻むだけで、琴羽へ自分の想いを伝えなかったんだろう。って。



どうしてあの時恨むだけで、自分で琴羽を助けに行けなかったんだろう。って。



どうしてあの時、おれは桐生を越えようって素直に思えなかったんだろう。って。



おれは……ホントに餓鬼だ。



自分しか見えてない餓鬼だ。



おれは、周りを見る事のできる桐生をいつしか憧れて。



そんな憧れに好きな女の心持ってかれて嫉妬してたんだ。



格好悪ぃ……おれ。




「お前はもう前に進んでるんだよな?」



櫻井っていう女を守る。って決めたんだよな?



かつて愛した琴羽の分まで。