「でも……阿山さんだって……琴羽の事……」



琴羽さんのお兄さんである凛の気持ちを思って言ったんだろう、江連は。



痛いほど伝わってくる。



でも凛は、江連に言った。



「俺は元々あいつを恨んじゃいねぇ」



そう言って凛は尚を見つめた。



そして尚の方を向くと、凛は口を開いた。



「ずっと……お前には苦しい思いさせちまったな。琴羽はお前を好きになった事悔やんじゃいねぇ。だから、そんなに自分を追い詰めるな」



その言葉に尚は俯いた。



そんな尚にあたしは歩み寄って、手を握った。



「美麗……?」



驚いたような顔をしてあたしを尚は見下ろす。



あたしは尚を見上げて微笑んだ。



「尚……逃げちゃいけないよ?大丈夫、あたしがついてるから」



そう言うと、尚はフッと笑った。



そして凛の方を向いて重い口を開いた。