拓哉の車の中はシンプルで物が何もなかった。


車から流れている曲は今流行りの歌ではなく、少し前に流行っていた曲だった。





「先生ってこういう曲聴くんだね」
「意外?」
「うん。全く流行ってもいない曲を聴いてそうだったから」
「なんだそれ」



つい、言葉に詰まってしまう。


沙依は運転する拓哉を見た。

「綺麗…」


拓哉の横顔はとても綺麗だった。



赤信号の時、拓哉は曲を変えようとした。



「大丈夫か?」
「は、はい…」






沙依は僅かに近づいてきた拓哉にドキドキしていた。




『……これだけでこんなにドキドキしているなんて』




沙依は自分の意思ではもうどうすることもできないことを気づかされた。