庭には沢山の赤薔薇が植えられている。
まだ蕾のものは切り取られ、美しく開いたものだけが目の前に広がっていた。
「ここがボード家の屋敷です。」


その言葉にゆっくり目蓋を開けると、窓ガラスごしに黒い屋敷が見えた。


「悪趣味ですね。」
「そうですか?」

運転手が横目で軽蔑を投げかけた。

「ご主人様の趣味にともなって建てられた屋敷ですので。」

「あぁ。」
その主人の執事になる身、言葉は選んで使わなければ。


その男、黒髪に切れ目の若者。名前を・・・


「ルインと申します。これよりボード家の執事としてやって来ました。」