高橋が部室の前に来たのは
制服に着替え終わった時だった。

「阿部くん。お疲れ様。」
お疲れ様のさまの所で
1年軍団の方に視線をやったのが分かった。

「どうしたの??」

「あ、愁斗と帰ろうと思ったんだけど…。」

ちらっと目を伏せたのも
俺は見逃さなかった。


「あいつ用事があるとかでついさっき早めに帰ったんだけど。あ、でも多分まだそこらへんに…。」


「あ、いいの。またで。」
パッと俺を見上げる
高橋の顔は笑っていたけど
いつも笑う時よりも
まゆげが少しさがって
寂しそうな顔になっていること
彼女は気付いていないだろう。


「追いかけよーよ。」
「え?」

目を伏せるのは
今度は俺の番だった。

「聞きたいことがあるんでしょ?」

小さくうなずく高橋。