「啓哉…?どした?」


辛そうにしている
啓哉のもとに駆け寄る。
この時間でコイツが
バテるなんて
あり得ないはず。


「…わりぃ。大丈夫。」


「顔色悪いぞ?無理すんな?」


「余裕余裕。」




ボールがハーフラインまで戻ってくる。
あと5分。
逃げ切れば勝ち。



「最後まで気ぃ抜くな!死守しろよ!」


「「はい!!」」


キャプテンの一言で
皆、気合いを入れる。



スタンドを見ると
そこには高橋がいる。
なんだかそれだけで
何百倍も
強くなる気がする。
これがラブパワーってやつか。


思わず顔がニヤケそうになり
頬を叩いて
最後の集中に入る。


ほんの数ヵ月前まで
なんかもう
全てがだるくて
俺何してんだろう
とかずっと思ってた俺が
こんな風に満ち足りた
生活を送っているのは
俺の心をかき回す
困ったアイツの
おかげなんだ。

どこまでも真っ直ぐで
ひた向き。たまにワガママ。
だけどほんとは
誰よりも俺よりも
俺のこと考えてくれてる。俺の重荷を
軽くしてくれる。




葵。
お前がいれば俺
いくらでも
頑張れる気がした。
いくらでも
立ち上がれる気がした。



「お前のために」が
自分の力になった。
俺自身が報われてた。


だけど結果
俺はお前に
何をしてやれた
何を残してやれた?




ごめん。いまでも答えは
出せないんだ。
何が誰が大切なのかって
分からないんだ。