彼女が泣いてる。 喫茶店のテーブルの向こう側。 俺はただ、嘘を並べ続けるんだ。 最低な奴だ、って思え。 ひどい奴だ、って思え。 それで、汐の罪悪心が少しでも軽くなるなら、 俺はいくらでも嘘をつくよ。 店を出て振り向くと、遠くで彼女が泣いてるのが見えた。 そこに差し出される腕は俺じゃない。 涙をぬぐう指は俺のものじゃない。 凱・・・・。 きっと、彼女は大丈夫。 俺はくるりと背を向け、通りに向って歩き続けた。