「修也・・・・」
立ちすくむタイチの横をすり抜けてトイレに向う。
胸の奥からすっぱい吐き気が何度もわきあがる。
吐いても吐いても、おさまらないそれに・・・・俺は廊下の壁にもたれて座り込んだ。
「修也・・・・おまえ・・・・何もあそこまで」
タイチの声が耳に聞こえるけど、俺はうつむいたままその苦痛になんとか耐えようとした。
「汐に・・・・足が治りました、だけ言ってもきっとあいつは俺から離れない。スキとか、そういうんじゃなくて、それはただの義務感だよ。何かきっかけがないと・・・・そうだろ?」
「・・・・・」
「本当は・・・・こんなことしたくない。汐はきっと今泣いてる。泣いてるよ・・・タイチ・・・。こんなこと、したくなかったのに・・・・」
こらえきれない俺の嗚咽が、静かな部屋に響き渡った。
「汐が・・・・好きなんだ・・・・誰よりも・・・・好きなんだ・・・・・ごめん・・・・ごめんな、汐・・・・・ごめん・・・・・」
そばにいてやれなくてごめん。
きっと泣いてるお前の涙を拭ってやれなくてごめん。
なにより、傷つけてごめん。
傷つけて・・・・ごめんな。

