冗談じゃねぇ!
なんでこんなことになっちまったんだ?
 

 走っても、走ってもいつまでもついてくる無数の松明の炎
 夜だと言うのにまるで昼間のように明るく―――
 並んだロウソクのようにオレンジ色にゆらゆらとゆらめいて、列をなし追ってくる。
 自分の耳に聞こえてくるのは(ドキドキ)と高鳴る鼓動と、(はぁはぁ…)と息切れる呼吸


こんなに走ったのは何年ぶりだ?


………。


覚えちゃいねぇぐらい、昔のような気がする。
ちょいたんま!

   …もう体がもたねぇ

 辺りを見回し、身を潜めるにはちょうど良い繁みを見つけると、倒れ込むように体を滑りこませ、息を潜める。


はぁはぁはぁはぁ……
心臓がつ、つ、潰れる……

 今にも口から飛び出してきそうな勢いで動く俺の心臓を、「出てくるな!」と言わんばかりにきつく手で押さえる。

「ウィット……大丈夫?」

 水晶のような大きな瞳をしばたかせ、少女は心配気にウィットの顔を覗きこんだ。

「だ、だ、大丈夫…って言いたい……が……」
「それはウィットの希望?」
「きっ、希望ってなぁ……」

苦笑いに呆れ顔を見せた俺をよそに、少女は、

「ウィット……お祭り?」
「祭り?なにが?」
「だって松明があんなに沢山……」

 無邪気に笑って追っ手の松明を指差す。

「ふふっ、きれいだね」
「!」

ガクッ……
俺は項垂れて、言葉を失った。

「あのなぁ………」

だっ、だっ、誰のせいで!

と叫びたい気持ちを必死におさえ、いまいち状況がわかっていない彼女から視線をそらした。

「マリーも参加したい!」
「さんか?」
「見に行こうよ。ウィットvvv」

甘えた声で強請るマリーは、今にも俺の手をふりほどき、松明目掛けて駈けて行きそうになる。

「ば、ばか!よせっ………っ」

止めようと引き寄せた拍子にバランスを崩したマリーは、俺の体にぶつかってそのままもつれるように俺の体の上へと落ちてきた。