そこに現れたのは、胸から上を描いた女性の肖像画だった。
まるで生きてるみたい。
呼吸して……今にもこちらに語りかけてきそう。
眩しくて……
全てを慈しむような微笑みは、まるで聖母マリアみたいだった。
芸術のことなんかわからないけど。
この絵を見ればわかる。
岳さんがどれほどこの絵に愛情を込めたか……。
力が抜けたあたしは、その場にペタンと座り込んでしまった。
これは敗北感。
何度体を重ねても、キスをしても……
あたしの想いなんて届くはずがなかった。
こんな風に愛されている百合さんには適わない。
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