ハニー*スパイス

何も言葉が出てこなかった。


代わりに、喉の奥がキュゥって苦しくなる。



「岳も、こんな若い子その気にさせるなんて、罪よね」


フッと息を吐き出した彼女は、

「かわいそうに……」

そう言って、あたしの肩に手を置いた。


あたしはそれをパンと払いのけた。



「同情とか……やめてください。
岳さんがあたしのこと……
なんとも思ってない、ってことぐらいわかってます」


「岳の言ってた通りね。
結構、気が強いんだ……。
あたしには耐えられないけどねー。他の女のことで頭がいっぱいの男なんて……。
ま、せいぜい頑張って」



さっとジャケットを羽織り、冴子さんは出て行った。