ハニー*スパイス

「岳さんは?」


動揺を悟られまいと、あたしも余裕ぶって尋ねる。


「急な用事だって、店を任されたの。
アナタが来るはずだから……って。
あたしに店番頼むなんて、失礼よね」


フフッて笑うと、彼女はカウンターの中から出てくる。



「じゃ、あたしはこれで……」



さっとジャケットとバッグを手にして、


ドアのそばに立ちすくんだままのあたしに近づいてくる。




そして、すれ違う瞬間、耳元で囁かれた。



「ねぇ……
岳と……シタ?」