いったいいつの間にいたんだろう。
数歩後ろに背の高い男の人が立っていた。
声の感じや服装からして、若そうだけど……。
目深にかぶったニット帽のせいで、顔がよく見えない。
だけど、あごのラインがキレイだな……
ってなんとなく、そう思った。
男の人はこちらに近づきながら淡々と言葉を続ける。
「ヘクセンハウス……“魔女の家”って意味。
ちなみにドイツ語」
「魔女の家……?」
そう言葉を繰り返した時、彼はちょうどあたしの横を通りすぎた。
そして“魔女の家”のドアに手をかけると振り返った。
「入ってみる?」