「おじさん……ってほどの歳じゃないですか!
それからあたしのことも、お子ちゃまとか言わないでよ。
あたしには“椿”って名前がちゃんとあるんだもん!」
「椿?」
岳さんは、あたしの顔をじっと覗きこむ。
「……って花の椿?」
「はい」
「へー……。
椿か……。いいね。
オレの好きな花だ」
ニッと口の端を上げて微笑む。
“好き”だなんて。
なんでもないことのようにそう言うから。
彼の言動にいちいちドキドキしてる自分が恥ずかしくなって俯いた。
きっとこの人は、女の人の扱いに慣れてる。
どんな言葉を言えば、女の人がドキドキするか、そんなことも知り尽くしてる。


