「じゃ、あたし帰るね」
ドアの方に向かう女の人を、岳さんは「あー、待って」と呼び止める。
そして「コレ、今日の分」と言って、封筒のようなものを差し出した。
「あー、忘れるとこだった。これもらわないと、何しにきたんだ……って感じだよね」
中を確認しながら女の人は目を丸くしてうれしそうな声を出す。
「えー? こんなにもらっちゃっていいの?」
「んー。オレ、こういうのの相場ってよくわかんねーし。
適当に入れといた」
「あはは。岳らしいね……。
またいつでも指名してね?」
なんだろう……。
指名?
会話の内容からして、封筒の中身は“お金”……だよね?
魅惑的な笑みを浮かべ、女の人はドアを開けて店を出て行ってしまった。


