「苦手だったら、残していいよ」 コーヒーをカウンターに置きながら岳さんが言う。 あたしは慌ててもう一口かじった。 「残しません。 出されたものはちゃんと食べます」 そう言うと、岳さんは感心したように眉を上げた。 「ふーん。いい心がけだ。 アンタ、ちゃんとしつけの行き届いた、いい家庭で育ったんだな」 なんだかパパのことを褒められたみたいで。 あたしはちょっとうれしくなった。 もう一口食べようと、口を開けたその時。 ドアが開く音がして、甘えるような誰かの声が店内に響く。