キョロキョロと見回してみても、メニュー表のようなものがどこにもない。 「あー……うちメニューないから」 「え?」 「コーヒーなら出せるよ。オレがいつも飲んでるやつだけど」 「はぁ……」 この人、本当にやる気ないんだな。 そう確信した。 「でも、この匂いは?」 鼻をクンクンと鳴らして 店全体に漂う、スパイシーな香りを嗅いだ。 「ああ。 それは売るために作ったんじゃないんだけどね……。 食ってみる?」 「うん」