そして翌朝。


岳さんはもうニューヨークに戻らなければならなかった。


二日ぶりに電源を入れた携帯には、向こうのスタッフから、おびただしい数のメールが届いていたらしい。


一緒にヘクセンハウスを出る。


ドアに鍵をかけた岳さんは、その鍵をあたしの手に握らせた。



そしてギュっと、あたしを抱きしめる。



「椿……あと1年待ってて。
あと1年で、クライアントと契約が切れる。
そしたら今度は日本で絵を描くつもりなんだ。
1年後のクリスマスイブ、必ず戻ってくる」


そう言って、岳さんはあたしの頬を両手で包み込んで、じっと見つめる。


そして試すように言う。



「待てるか?」