――あ……これ。
昨日と同じスパイシーな香り。
気がつくと、いつの間にか目の前のドアが開けられていた。
無意識のうちに岳さんの指をチェックしていた。
昨日は赤く染まって、血がついているように見えたけど……。
今日はそんなものはどこにもついていない。
あれは怖がっていたせいで見えた錯覚だったのかな……。
うん、きっとそうだ。
まるでドアボーイみたい。
岳さんは、片手でドアを押さえたまま、あたしを中に誘導する。
「どうぞ」って。
その笑顔はやっぱり王子様みたいで。
だからあたしは戸惑うことなく“魔女の家”に足を踏み入れたんだ。


