あたしは顔を覆った。 岳さんが抱えていた心の傷が、こんなに深いものだったなんて。 「岳はヘクセンハウスに住んで、この街の病院に母親を転院させたんです。 故郷に戻ればひょっとしたら何か思い出してくれるんじゃないか……という願いもあったんでしょう。 病院に足を運んでは、話しかけたり、子供の頃の自分の写真を見せたりしてたみたいですよ。 それでも一度も岳のことを思い出すことはなく、結局……」 山口さんも泣くのを堪えているのか、目が真っ赤に充血している。