山口さんは一瞬口をつぐんで……それから話してくれた。
「百合さんは、脳の病気を患っていました」
「脳の病気……?」
「細かな病名は一応あるんですが……。“アルツハイマー”……のようなものだと説明すればわかりますか?
脳が萎縮して記憶障害などの症状が起こります」
「記憶障害……」
「岳と再会した時には、すでに末期状態で、言語能力も衰えていました。
当然、岳のことなんて理解できるわけもなくて……。
残酷ですよね。あんなに必死に探していた母親がやっと見つかったというのに。
自分のことなんて記憶にないんですから」


