「あたし……てっきり恋人だと。
だって、冴子さんがそう言ってたし、岳さんも否定しなかったし……」
「冴子はほんとのところの事情は知りません。
あの百合さんの絵を見た人はみんな、岳の恋人だと勘違いするんですよ。
あの絵は、岳の記憶にかすかに残る、百合さんへの憧れを描いたものですからね。
それは見ようによっちゃ、恋心にも見えたかもしれない。
岳は自分の生い立ちを説明するのもめんどうだからと、恋人だと誤解されてもいつも否定しなかったんです」
山口さんは一息ついて、じっとあたしを見つめる。
「でも、アナタを騙していたのには、別の理由があったと思います」
「別の理由?」
「ええ。
いずれニューヨークへ行くことは決まってましたから。
アナタとはあえて距離を保っておきたかったんでしょう。
未成年のアナタを一緒に連れていくわけにもいきませんし」
「それって……どういう意味……」


