ハニー*スパイス



「うっ……」


涙があふれてとまらなかった。


人前だというのに、しゃがみこんで泣いた。



「大丈夫ですか?」


急に声をかけられて、あたしは慌てて顔を上げて涙を拭う。



「すっ、すみませんっ」


その人は、スーツの内ポケットから出した名刺をあたしに差し出す。


「申し遅れました。
僕はこのギャラリーのオーナーで山口といいます。
ようこそ、椿さん」


「えっ」


単なる係員だとばっかり思ってたけど、この人、ここのオーナーさんだったんだ。


「岳とは幼馴染で……そして以前は彼の仕事のマネージメントを任されていました」



「そうだったんですか……」


「僕のこと、覚えていませんか?」