食器をシンクに置いて、水を出そうと蛇口のレバーを上げると、パパが話しかけてきた。 「なぁ、椿」 「ん?」 「15日……大丈夫だよな?」 「うん。わかってるって」 11月15日。 その日、あたしは“新しいお母さん”になる人と会う。 ママが死んで、もう6年。 その間、パパは仕事をしながらあたしの面倒も見てくれて。 ずっとひとりで頑張ってた。 そろそろ自分の幸せを考えてもいい頃なんだ。 そう思ってはいる。 なのに…… 得体のしれない不安がざわざわと押し寄せてくる。