ハニー*スパイス



「それって、ある意味営業妨害じゃない?」


「ごめんごめん。
でも、作り話ってわけでもないだろ?
実際ヘクセンハウスは“魔女の家”って意味だし。
それに、あの頃はなんか椿をからかうのが楽しくて……」


クックッと肩を揺らして笑うパパ。


なんだかんだ言って、この人はひとり娘のあたしにデレデレだと思う。

今だって、だらしなく口元が緩みっぱなしだ。


「いやぁ、あの頃の椿、ホント可愛くてさぁ。
怖い話とかすると、本気で怖がって『パパ!』って泣きそうな顔してしがみついてくるんだよなぁ……。あれ、たまらなくて……」


どうりで。

やたら怖い話ばかりするなぁ……って不思議だったんだよね。

そんな下心があったとは。



「パパってなんかキモい……」


そう呟くと、パパは外国人みたいなオーバーアクションで胸を押さえる。


「うわっ。パパ、それ傷つくなぁ……。
あの頃は毎日『パパ、パパ』ってべったりだったのになぁ」


「いつまでも子供じゃないもん。
パパもいい加減、子離れしてよね。
てか、さっさと食器片づけて宿題したいんだから、パパも早く食べてよ」


しょんぼりするパパを放置して、自分の分のお皿を持って立ち上がる。