ハニー*スパイス

「クリスマスイブで、朝から雪が降ってた。
あの時、ママのお腹には椿がいて。
2人っきりで祝う最後のクリスマスだから……ってディナーを予約しててね。
その前にお茶でもしようってあの店に寄ったんだよ。
そしたら、岳くんがいて。
やけにキレイな顔した子だなーってママとふたりで見とれてたんだ。
あそこはマスターの奥さんがドイツ人だから、彼には4分の1、外国の血が混じってるんだね」



おばあちゃんがドイツ人……。

いわゆる“クォーター”ってやつか。


あんなにキレイな顔してたのも、なんだか納得できてしまう。


「でも、それならなんであんな作り話したの?
あそこに魔女の家がある……だなんて。
しかも『食べられる』とかまで。あれ、結構トラウマになってたんだよ?」


恨めしげにパパを睨む。

あの話を信じていた頃は、森の前を通ることすら怖かったんだから。